ケイマフリ Cepphus carbo
Spectacled Guillemot

2018.3.17 ケイマフリ成鳥左:夏羽 右:冬羽から夏羽に換羽個体 撮影:寺沢 孝毅

全長:37cm 環境:海岸
夏鳥として冬から夏にかけて記録される。
天売島での観察時期:1・2・3・4・5・6・7・8・11・12月

国内最大の繁殖地

 ケイマフリは主に北海道沿岸およびロシアのオホーツク海に面した断崖や離島に生息しています。国内では天売島が最大の繁殖地であり、世界で最もケイマフリの観察がしやすい場所でもあります。天売島では毎年4月になると800羽ほどのケイマフリが飛来し繁殖しています。
 ケイマフリは鮮やかな深紅の足、可愛らしい目の周りの白、よく響く美しい鳴き声、鳴く時だけ見える口の中の赤などの特徴から、国内のみならず世界各地のバードウォッチャー憧れの海鳥です。
 ケイマフリという名前はアイヌ語の「ケマ・フレ」(赤い足)から来ており、見た目の特徴がそのまま名前になるほど赤い足が美しく目立ちます。また鳴き声が美しいことから、別名で「海のカナリア」と呼ばれることもあります。

ようやく解明されはじめた繁殖生態

 ケイマフリの営巣地は切り立った断崖の割れ目や岩のすき間で、その人を寄せ付けない場所で子育てをすることから、長年どんな風に子育てが行われているのかは、ほとんど謎のままでした。
 世界でも数が少なく希少なケイマフリを守るためには、繁殖地での暮らしぶりを知る必要があります。人がアクセスしやすい巣を探し、小型カメラを仕掛けるなどして子育ての情報を集めたおかげで近年、少しずつその謎が解明され始めました。天売島では2019年、世界で初めてケイマフリ巣内の繁殖中の4K映像記録にも成功しています。

天売島での繁殖生態について

 ケイマフリは毎年天売島へ繁殖のため3月下旬から4月上旬にかけて早朝の赤岩沿岸で見られるようになります。4月上旬から5月上旬にかけて求愛時期で、ペアがくるくると回りながら鳴き合うなどの行動が見られ、その後沿岸の岩礁にオスが先に上がり、鳴いてメスを呼んだあと、互いに鳴き合い交尾が行われます。交尾を行う場所は一番利用頻度の高い場所が岩礁ですが、他のペアモコの場所を使おうと奪い合う激戦区であり、岩礁以外にも営巣地近くのよく止まる岩であったり巣の中で交尾することも確認されています。
 5月中旬頃から抱卵がはじまり、ここから孵化まで28日間オスとメスが不定期に交代し2つの卵を温めます。6月の上旬からヒナが孵りはじめ、朝のボートクルーズや赤岩展望台では餌を咥え飛ぶケイマフリの姿が見られます。

2013.2.19 ケイマフリ成鳥冬羽 撮影:寺沢 孝毅

2016.1.27 ケイマフリ成鳥冬羽 撮影:寺沢 孝毅